『My Story』
~ミホ・ワールド~
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イミテーション・ラブ
ドラマティックな恋をした。

はじめて逢ったときに
互いに感じたインスピレーション。
たくさんの本
たくさんの音楽
たくさんの映画
たくさんのお喋り
分け合ったシンパシー。

くちびるを重ねて
触れ合って
からだはひとつに溶け合った。


「永遠だね」
あなたはそうささやいたのに
別れてしまえば
なにもかもが幻。

「サヨナラ」
あれから7年半の歳月は
わたしたちを十分に他人にした。
笑い合った日々さえ
嘘のように消えた。

心に消えない傷跡
あなたのせいにしていたけれど
本当は
わたしたちは
ドラマティックな二人などではなくて
最初から全部は
一緒に造り上げてしまった
イミテーションだったと
ようやく気づいた。



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罪はふたり同じ重さ
罪なのは
彼が
『自分には妻が居る』
ということを
認識していないことよ。

わたしが
これほど不倫にさいなまされても
どこ吹く風の彼には
わたしの苦悩が届かない。


なぜ
こんな恋をしてしまったのだろう。

なぜ
それでも
わたしは
この恋を貫こうとしているのだろう

深く深く愛してしまった。

「貴方に生涯のすべてを賭けている」
もしも
そう言ったなら
彼は困った顔をして
その場をやり過ごすのだろう。


時を戻すことが出来るのなら
わたしは彼と出逢う前のわたしになって
不倫で苦しむことなど
知らずにいたかった。
…そう言葉にすれば
きっと彼は
自分が責められていると
思ってしまうのだろう…
それが怖くてわたしは
また躊躇する。

別れなど考えられない。
罪は同じ重さね
わたしも心裏腹。


張り裂けそうな想い
愛の結末は
どこに続くの
どこまで続くの?


幸福感、愛撫
唇と唇を重ねる。
そうして
彼がわたしの胸を
撫でてくれる。

掌の安心感に
泣きだしそうになる。


彼の指がさらに
もっとも敏感な部分を探し当てる。
もうすっかり濡れているその場所を
念入りに念入りに愛してくれる。

気が遠のきそう……


抱き合ったのは
久しぶりだった。

いろんなことが重なって
ここしばらく
お互いにそんな気分になれずにいた。

肌と肌を重ねることが
全てじゃないとは
わかっていても
抱き合えたときは
心がくつろぐ。
心が安堵感に包まれる。


欲しいのは快楽じゃない。
欲しいのは彼の優しさ。

感じるのは
幸福感。
身体だけじゃない。
たましいの幸福感。


この気持ちに揺られながら
喜びと苦しみの狭間を
ゆらゆらと
揺られながら

こころは
やっぱり
あなたを求めている。

使い古された告白の台詞
「愛しているわ」

そして
ありきたりな常套句
「愛しているよ」

それでも意味を持つ。
わたしが言えば
使い古された台詞でも
真実が詰まっているの。

それでも意味を持つ。
あなたが言えば
常套句でさえも
わたしを黙らせる
秘密兵器になり得るの。


愛し合う不思議

喜びと苦しみの狭間で
ゆらゆらと
揺られながら

ゆらゆら揺らめく
今夜のわたしの気持ちはいかが?
今夜のわたしは幸せかしら?
自分自身に問いかける


使い古された告白の台詞
ありきたりな常套句
そっとそっと大事に重ねながら
このまま
このまま
ふたりで生きて
ふたりで死んでゆけたなら…

この気持ちに揺られながら
愛し合うことの不思議を想う

運命のイタズラに溺れてみるのもいいわ

偶然にも
あの人と出逢わなければ
この恋は始まっていなかった。

今夜は
そんなことを思って
幾つもの偶然が
わたしたちを引き合わせてくれたことに
感謝したりしている。


インターネットで
知り合ってから
今年でもう15年にもなった。


ずっと順調に交際が
続いたわけでは決してなくて
一度も二度も別れを繰り返して
そうして
偶然にも再び巡り合い
愛し合い
『偶然』は『運命の必然』になった。


『恋』はいつしか『愛』へと形を変えて
『愛』は時間と共に『情』へと形を変えて
だけど
確かな想いがここにある。


幼いころ夢見てた
ドラマティックな恋とは
かなり違う展開のふたりの関係。

ただ
互いがいとおしくていとおしくて一緒に居る。


いとおしさ
ふたりの間に育まれて
それを
『運命』と言わずに
なんて呼べばいいのだろう。


想い合うこの気持ちは
これから先
どんなカタチになるのか
わからない。
だから嘆いたり哀しんだり
溜め息をついたりすることさえも
運命の恋をしてる証なのだと
胸を張って言えたなら…


運命など信じないと
わたしの恋人は言うけれど
幾つもの偶然が
ふたりを引き合わせてくれたように
運命に導かれることも
必要なんじゃないかと
ふと
そんなことも考える。

なるがままに
運命のイタズラに溺れても
いいのじゃないかと
静かに思う夜。


結ばれることの出来ないふたりが
この先
どんなふうになっていくのか
なるがままに
流されてゆくままに
運命のイタズラに溺れてみたいと
素直に思う夜。

滅びゆく花
夜ごとに見るのは
滅びゆく夢

それは
きっと
叶わぬ恋をしているから。


「ねえ
わたしたちはいつまで続くのかしら」

問いかけるたびに
あの人は
「ずっとだよ、ずっと仲良しだよ」と
笑うけれど

この先
ふたりが一緒に居れる
保障など
どこにもないほど
わたしたちは
許されない関係で

ときどき
わたしは
あの人をいっそ憎めたらと
そんな不可能なことを
思ってみたりするのよ。


迷路に入ったまま
出れない恋。


夜ごとに咲くのは
枯れてゆく花

それは
わたしという名の
一輪のおんな。


どうか
きづいて
わたしの叫びを

安らいで
眠りたいわ
やわらかく
咲きたいわ


この恋には、希望がない

映画で観た
不倫の愛は
無残なシーンがあったけれど
最後には『希望』があった。


現実で生きる
不倫の愛は
優しくておだやかだけれど
最後も今も『希望』は無いのよ。


なぜ
こんな恋をしているのだろう。
毎日、幾度も
自分の心に問いかける。
別れる覚悟すらなくて。

映画と違って
現実は
なんて
かなしいんだろう。
先が見えない。
吹いたら飛ばされてしまうような
儚い関係を
繋ぎ合わせることに必死なの。


いつか
あの人が言っていた
「子供たちが一番に大切」
その言葉が頭の中で
反芻している。
「子供たちのために生きている」
その言葉は
わたしを打ちのめすわ。


もしも
わたしが
あの人との命を産んで
育めるほどの状況だったなら
わたしだって欲しい
あの人との小さな授かりものが。

叶わない願い。

愛し合っても
なにも残らない
わたしたち。


映画で観た
不倫の映画は
無残なシーンがあったけれど
最後には『希望』が残っていた。

現実で生きる
不倫の愛は
なんにも
なんにも
なんにも
空っぽ。


今宵のワインの味を教えて
今でも
わたしは
貴方を忘れていません。

だけど
それは決して未練でも
恋しさでもなくて

なんて言ったらいいのでしょうか

懐かしい貴方に
今のわたしを伝えたくて
ただ、ふと
心が貴方を忘れていないだけです。


「サヨナラ」を言ってから
もう7年にもなりますね。
早いですね、月日の経つのは。

貴方は
相変わらず
貴方らしく暮らしているのでしょう。
今宵のワインは
どんな味ですか?
グラスを片手に
夜空にカメラ向けている
そんな貴方が思い浮かびます。

ねえ
わたしたちは
お互いに嘘つきでしたね。
今だからこそ
分かることもあるのですね。
「愛している」
わたしたちは
お互いに嘘つきでしたね。
本当は
二人の間には欠片も
愛なんてなかったと
今ならば
冷静に分かるのです。

それでも

今でも
わたしは
貴方を忘れていません。

どうか
貴方も忘れないで。
たとえ
勘違いでの
いつわりだったとしても
輝いた一瞬があったことを。


死ぬほど甘いロマンスがしたい
わたしの恋人は
自分からは決して
「好きだよ」も「愛しているよ」も
言わない。

恋人の行動を見ていると
わたしを粗末にしてはいないのだと
思いは痛いほど伝わってくるのだけど

やっぱり
そうね
やっぱり
言葉でも
「好きだよ」は言ってくれないと
とても悲しい。

一人相撲しているみたい

なにも言わない恋人を見ていると
とても虚しくなってくる。

これが
たとえば夫婦とかだったら
「言わなくてもわかるだろ」的な
感じなのだろうけど
わたしたちは
夫婦ではない。
夫婦にはなれない二人なのだ。

恋人はわたしの胸のうちを
知っているのだろうか。
夫婦にはなれない二人。
そのことが
どんなにわたしを傷つけ
苦しめているかを
知っているだろうか。

とても陳腐な願いかもしれない。
それでも
だから
その隙間を埋めるように
「愛している」の言葉が欲しい。


これが
最後の恋。
結ばれないのなら
せめて
死ぬほど甘いロマンスがしたい。



14歳。処女喪失

14歳。

ある祝日、わたしの両親が
日帰り温泉旅行に
連れて行ってくれると言った。

あまり気の進まなかったわたしは
「行かない」と断った。

これが幼少期だったら
楽しみだったかもしれないが
すでに年頃のわたしには
両親との温泉旅行は
あまり魅力のないものだった。

なにより、父の酒癖が悪かった。
温泉なんて
どうせ宴会をして
父は泥酔するにきまってる。
そうして
最後は母と夫婦喧嘩になって
......そんな展開の旅行にきまってる......


母が言った。
「どうせだから
ユタカくんを誘ってもいいわよ」

ユタカはわたしの
当時のボーイフレンドだった。
「ユタカを誘ってもいいならば
ちょっとは楽しくなりそう」

ユタカとわたしの旅行ではないけれど
なんとなくテンションは上がってきた。

ピンクの洋服を選んで
わたしは支度をした。

当時、少し大きめの八人乗りの
ワゴン車だった我が家の車。
出発時間になって
ユタカも来てくれて
車に乗り込もうとしたら
見知らぬ男性が突っ立っていた。

誰?
不気味な雰囲気のその人に
わたしは尻込みをした。

「どなたですか?」

すると、父がやってきて
「ああ、お父さんの友人のスズキ。
こう見えても、いいヤツでねえ。
誘ったんだよ」と
わたしにスズキさんを紹介した。

「どうも、スズキです。
温泉でたっぷりと遊びましょう」
スズキさんはニヤリと笑った。

父が運転して母が助手席で
楽しそうにしていた。

わたしもユタカとお喋りしながら
車中を過ごした。

わたしには弟がいたから
面倒を見なくちゃ、と思ったけれど
弟は車に乗るや否や
スヤスヤと寝息を立てて眠り始めていた。

結構、気を遣ってしまうわたしは
スズキさんが一人で気の毒に思えて
ちらりと様子を伺った。

わたしと目と目が合ったスズキさんは
最初のときに見せた
ニヤリとした顔以上に
不気味な笑いを
わたしに返してよこした。

スズキさんのこと
なんだか心配をしなきゃ良かった、と
わたしはまたユタカと
お喋りの続きをした。


旅館にたどり着いて
温泉に入るよりも先に
まずは宴会になった。

父はアッという間に
酔ってしまって
母も酔っていた。

スズキさんは
「お酒に弱い」ということで
アルコールには手を出さずに
お茶やらソフトドリンクを飲んでいた。

「ねぇ、お母さん
いい加減に温泉に入ろうよー」

わたしと弟は
母に催促をしたが
わたしの言葉など
耳に入ってはいない様子だった。

日頃の仕事の疲れからか
母はお酒を飲んだあと
昼寝をし始めた。

父はといえば
やはり泥酔状態になっていた。

「お母さん、お母さん
温泉に入ろうよ」

「あたしは今、眠いのよ、入っておいで」
母はわたしに弟を託した。

弟をどうするべきか
しばし、悩んだ。

それこそ、一緒に入るには
わたしも気恥ずかしいし
ユタカに弟の世話を
お願いしてもいいものなのか

スズキさんが
「じゃあ、わたしが子供さんたちを
お風呂に連れていきましょう」と
言ってくれたが
なんだかイヤだな、と思った。

「いいえ、スズキさんは
お父さんたちと一緒に楽しんでください。
弟の世話はユタカに頼むし
わたしは大丈夫なんで」

スズキさんは
ねちっこい声で執拗に言った
「一緒にお風呂に行きましょう」

母は「鈴木さんのお世話になりなさい」
そう言って、また眠りの夢の世界へ。

泥酔している父は
まったくアテにならなかった。


スズキさんとユタカと弟とわたしの4人で
温泉へ続く廊下を歩いた。

温泉は客室からは
"離れ"の場所で
ひっそりとしていて
その時間帯は
わたしたちしか温泉客はいなかった。

スズキさんが言った。
「ユタカくんたちは、ちょっとだけ先に
入っていてほしい」

変な人、とわたしは思った。
ユタカは
わたしの弟の面倒をみてくれようと
サッサと、男湯の、のれんをくぐって
入って行ってしまった。

「じゃあ、わたしも
お先させてもらいます」と
わたしは女湯の
のれんをくぐろうとした。

その瞬間
スズキさんに腕をつかまれた。

「忘れ物だよ」
「えっ?」

振り向いた途端に
スズキさんはわたしの唇を
タオルで覆った。

声が・・・
声が出せない・・・

「お洋服は僕が脱がせてあげようね」

塞がれてしまった口からは
助けが呼べない。


14歳。

いろんなことを夢見てた。
いつか好きな人と結ばれる夜を
夢見てもいたし
いつか来るはずの『その日』を
幼いなりに待ち焦がれていた。

こんなに無残な形で
『初めて』を思い知ることになろうとは
予想もしていなかった。


14歳。
飛び散ったピンクの洋服。
飛び散った夢。


痛かった。
怖かった。
痛かった。
怖かった。

悪夢から解放されたあとも
わたしは動けなくなったまま
倒れこむようにうずくまった。


やがて
温泉から出てきた
ユタカと弟は
裸体で半分気絶しているわたしを
目の当たりにして
あとずさりした様子だった。

ユタカは反射的に
わたしの弟のを抱きかかえて
「お姉ちゃんを見ないであげて!」と
叫んでいた。

ユタカは言った。
「待って、人を呼んでくる!」
「お願い、呼ばないで」

...ユタカにすれば
それが精一杯だったのだろう...

わたしは
のろのろと着替えた。

そして壁伝いに歩こうとしたが
やっぱり歩けなくて
その場にしゃがみこんだ。

しばらくして父と母が来た。
「なんかあったらしいからって
飛んできたのに
なんだ、お前、眠いのか?
こんなところに倒れこんで
なにやってるんだ」

父が
「せっかくの酔いを醒まさせるなよ」と
わたしを罵倒した。

母は
「お風呂からなかなか出てこないなんて
マイペースもいい加減にしなさい」

わたしは、もう、言葉がなかった。

ユタカは目をそらしたまま
もうこっちを向いてはくれなかった。
目をそらしたままでいてくれたことは
あのときのわたしにとっては
救いだった。
ユタカに対しては
ただ、ただ恥ずかしかったから。


14歳でわたしは
よごれてしまった。

あれから
たくさんのたくさんの歳月が
流れても
あのときの痛みと恐怖と屈辱は
蘇る。


歳月はどんな出来事をも
忘れさせる?

そんなことは、ない。

わたしは
わたしが思っていた以上に
未だに傷ついているままだ。

授からなかった命のコト

恋をした。

恋に落ちた。

愛した、愛された。


わたしたちは
避妊をしないで
愛を交わし合った日があった。

それは
わたしの勘違いからのことだった。

子宮のレーザー手術を
受けたことのあるわたしは
手術前に
なるべく情報を集めた。

『レーザー手術をすると
妊娠は不可能になる』
集めた情報の中には
そう書かれた手記もあったので
わたしは、それを鵜呑みにした。

恋人と愛を交わし合う途中で
わたしはその手記をふと思い出した。
妊娠しない体なんだ。
抱きしめられながらの高揚感の中で
わたしは恋人に
今日は避妊具をつけないで欲しいと
懇願した。

戸惑いの様子を見せた恋人は
それでも
避妊具を使おうとしていたけれど
わたしは言った。
「だって、子宮の手術をしたのよ。
妊娠の心配は何もないのよ」

わたしは
快楽が欲しくて避妊具を拒んだわけでは
なかった。
ただ、ただ、出来るだけあたたかな
そのぬくもりを...
ぬくもりそのままを
わたしの全部で感じたかった。

恋人はわたしの提案を了承した。
避妊具をつけずに
その日、わたしたちは
愛を交わし合った。

愛し合った直後に
恋人は少しだけ考え込んでいた。
「前回の生理いつだっけ。
今度の生理の予定は?」

わたしは前回の生理日と
次回の生理日の予定を答えた。

彼はやはり考え込んで
「ねぇ 生理があるってことは
妊娠しないとは限らないんじゃないか」

着替えもしないまま
スマホを手に
わたしはネットで調べ直した。

『手術をしたら妊娠不可能』は
今となっては古い情報だったのだ。

最新の医学では
子宮を手術しても
数ヶ月後からは妊娠は可能だという
真相を知った。


恋をした。

恋に落ちた。

愛した、愛された。

愛する人の子供だったら
産みたいに決まってる。
愛する人の子供だったら
欲しいに決まってる。

でも

妊娠を喜んではいられない
ふたりには事情があった。
そのうえ
わたしは
それこそ今の医学では
治りようのない
大きな大きな病いを抱えている。

どんなに願っても
望んでも
決して妊娠はしてはいけない。

それからしばらくの間
わたしたちは妊娠の心配をしたけれど
赤ちゃんは授かってなかった。

ホッとしたと同時に
とてもとてもとても寂しかった。


宿らなかった命に
ふたりで名前をつけるために
小さな小さな縫いぐるみを買った。

名前は彼がつけた。
「アムがいいんじゃないか」と言った。
男の子か女の子かわからない命だから
そういう名前をつけたいと言った。

わたしは
その『アム』に漢字を当てはめた。
愛を結ぶ、と書いて
『愛結』=『アム』
授からなかった命に名前をつけた。


恋をしている。

恋に落ちている。

愛した、愛された。

もっと早くに彼と出逢いたかった。
そして
堂々と命を授かりたかった。
病いになどなりたくなかった。
愛して愛されたなら
そのまま自然に
産める体でありたかった。

来世で巡り合っても
きっと わたしは彼に恋をする。

そのときは
あの日、授からなかった命を
ふたりで手放しで喜ぶことができたらと
願う。


恋をした。

恋に落ちた。

愛した、愛された。

来世で巡り合っても
きっと、きっと
わたしは彼に恋をする。
宿らなかった命を
来世では宿したい、授かりたい。


わたしは、Baby
恋人の胸に包まれて
まるで赤ちゃんのように
わたしはぐっすり眠った。


この街で身寄りのないわたしは
いつも不安に怯えていて
明日には自分は
本当に孤児になってしまうのではないかと
不安を募らせる日々が続いている。

わたしには誰もいない。

それがどれだけ心細いことか。
『孤独』

この連休は
その思いを払拭するかのように
恋人は優しくわたしを抱きしめて
眠ってくれた。


わたしは
まるで赤ちゃんのように
ぐっすりと眠った。

幼いころ
父も母も与えてはくれなかった。
オトナになって
温もりを求めて放浪するように
幾つかの恋もしたけれど
誰もこんなふうには
包んではくれなかった。
体の関係を持って
それでおしまいだった。


長い放浪の旅は
もう、終わり。
欲しかったのは
こんな温もり。

ようやく巡り合った恋人と
ふたりで過ごした
4回目の
ゴールデン・ウィーク。


私がタトゥーを彫った理由
その人は
いつでも
わたしのことを『薔薇』にたとえた。

「ミホは薔薇のようだよ」と
わたしを
薔薇から生まれた天使だと言った。

その人と
『永遠の愛』はどんなものなのかを
ふたりで話した。

たとえば消えない何かを
互いの体に残したなら
永遠の愛の証になるのかとか

そんなことを
ふたりで話した。

だんだんとその話は
エスカレートしていき
『永遠の愛』を得るために
わたしはひとつのことを思いついた。

タトゥーを彫ること。

「ねぇ
もしも
わたしが胸にタトゥーを彫ったら
ずっと愛し合っていられるかしら?」

その人は
興味深そうにタトゥーの話に同意した。

わたしは
『永遠の愛』を勝ち得るために
胸にタトゥーを彫ることにした。

けれども
わたしは彫ってすぐに
大きな後悔に襲われた
...というのか
ハタと我に返った。
こんなタトゥーひとつで
永遠の愛を得ることができるとは
やっぱり到底、思えなくなっていた。
そして
わたしはその後悔を
その人には告げられずに
ひとりで思い悩むことになってしまった。

『永遠の愛』を勝ち得るための
タトゥー。
そうよ、そう思えば悪くはないわ、と
自分で自分に幾度も言い聞かせたのに
結局
その人とはタトゥーから
数ヶ月後には別れた。

残ったのは無残に刻んだ
薔薇のタトゥーだけ。


自分の体を粗末にした
そんな愚かな恋もあった。



バージン・フレグランス

何かで読んだ
「付き合っている男が変わると
女は香水を取り替える」

いわれてみると
確かにそんな感じがする。
そういえば、そうだったような。


ティーンエイジャーのころ
ひそかに憧れの人が出来たとき
はじめてコロンをつけたことを
ふと思い出した。
それは
ほんの少し背伸びして
そっと階段を昇るような気持ちで
コロンをつけ始めた遠い記憶。

『香り』というのは
脳と直結する仕組みだと
アロマのライセンスを取得したときに
学んだことだった。

脳と直結するのが香り
ゆえに
五感に働きかけて
体のあらゆることに刺激して
第六感までにも達する。

という難しいことを
習ったか否ではなくて
大人の女はズルさを知っている
と私は思うのだ。

よく歌の中で
『残り香』だとか
『移り香』という言葉が歌われるが
べつにライセンスなど取得しなくても
男に対するコロンの使い方を
大人の女は
熟知してしまっているのかもしれない。


幼いころには
背伸びするための
小道具だったコロンが
大人になっての恋は
ちょっと階段を上がるくらいじゃ
物足りなくて
自分の存在を
彼の体に思い知らせるための
ズルイ使い方を私もしていた。

『女は男と別れると香水を変える』
私自身
そうだったかもしれない。
でもそれは単純に
古くなってしまった恋に
ピリオドを打つことなのだと
せめてもの言い訳をしたい。


今現在の私は
ジルスチュアートの
コロンを身につけている。

ジルスチュアートのコロンは
バージンの香りだと思うから
愛用しているのだが
心が処女であることは
何者にも支配されない。


もうこんな年齢だから
処女に戻れるわけもない?

そんことない、そんなことない
女は香り次第で
バージンになれると
私は思う。

フレグランスは
変幻自在のアイテム。

ジルスチュアートのコロンは
お花と果実が優しくふわふわ
ピュアな自分に戻れる香り。
ボトルの蓋のリボンは
眺めているだけで
透明になってゆける。

・・・女は何にだってなれる
変えられない過去
変えられない環境
変えられない立場
変えられない性格
だけど
女は何にだってなれる

男を縛るためのコロンではなくて
男にアピールするためではなくて
私が私で在るためにつける香り。

バージン・コロンには
そんな信念が宿る。



わたし、死ぬわ
「わたし、死ぬわ」

その人と
ホテルに行ったのは
出逢った翌日のことだった。

まだ出逢って
まもないのに
わたしはすっかり
その人のことが好きになっていた。

一夜限りの関係だと思った。
「今こうして一緒に居るけれど
あすの朝になったら
またわたしは独りになるのね」
そう思ったら
泣きたいのを通り越して
どうしたらいいのか
わからなくなってしまった。

大好きになってしまった男性に
わたしのなにもかもを
ぜんぶ委ねたい気持ちだった。

だけど
わたしは甘え方を知らなかった。


「わたし、死ぬわ」
そういって
その人の目の前で
クスリを飲んだ。

「なにを飲んだんだっ!」と
その人は
わたしを洗面所に連れて行って
クスリを吐き出させようとした。

「死ぬクスリを飲んだのよ」
...嘘を言った...

なんてわたしは不器用なんだろう。
「貴方に甘えたい」と
そのまま言えばいいのに。
「貴方とこれからもずっと一緒に居たい」と
そのままの気持ちを言えばいいのに。

「なにを飲んだんだ?」
「だから、死ぬクスリだってば!」

吐き出させようとするその人に
わたしは抵抗した。
もちろん、吐き出す必要はないわけで
わたしは甘え方がわからずに
"好きです"という
自分の気持ちをうまく伝えることができずに
どうしたらいいのかわからずに
本当は常備薬を飲んだだけだったのだ。

「飲んだクスリを吐けっ」
真剣に怒鳴るその人の表情に
わたしは観念して
本当のことを言った。
「常備薬を飲んだだけよ」

その人はホッとした様子で
わたしを洗面所から連れ戻すと
ベッドに腰をおろした。

上手に愛の告白ができない。
なんて言ったらいいのかわからない。
その上、出逢ってまもないのに
『死』という言葉を口にしてしまった
...嫌われたかしら...


その人は
煙草に火を点けて
ふわっと吐息を宙に向けて
一緒に生きようと言った。

俺もやり切れない夜は
たくさんあるよ。
耐え切れそうにない夜もあるよ
それでも生きるんだ
一緒に生きようか。
その人はそう言った。

悲しみを伝えるすべ
嬉しさを伝えるすべ
愛を伝えるすべ
わかっていなかったけど
初めて、知った。


今のすべてで貴方を愛したい
人生に白か黒しかないのなら
どちらを選んでも きっと
不幸になるわ

苦しむだけの選択肢を
並べて溜息をついていたの

今の真実だけで貴方を愛したい
今のすべてで貴方を愛したい
満点の正解なんて
出ないのよ 今は

なにもかもを越えて
貴方と愛し合うことができたなら
たぶんそれが答えになる

二人にしかわからないことは
二人だけが知ってればいい

揺れ動く心
揺られ揺られたとしても
苦悩が私を突き刺していても
後悔だけはしたくない



恋千夜
惹かれ合う運命だったのだと
貴方の腕の中に堕ちてゆく

背中にツメを立てたい
貴方は私だけの人だと
永遠に消えないほどの
しるしを残せたらいいのに
何の保証もないから

背中にツメを立てたいのは
むしばまれた傷の
私の心に刻まれた痛みを
分かち合う代わりに

教えて
この恋は続いてゆくの?
刹那で終わるわけじゃないこと知っても

教えて
この恋の行方を
エンゲージリングの代わりに
マリッジリングの代わりに

どうか
ください
もっと
その先を
そのくちびるで
その指先で
わたしの体をなぞって

幸福感を
一番奥深くまで突きさして
ふたりが満たされるまで
私に答えが見つかるまで


間違いだなんて言いたくない
好きになったのは間違いなの?
間違えた恋をしている
誰にも言えないけれど
時々、叫びたくなる。

わたしなんて もう
生きている意味などなにもなくて
ただ貴方が居るから
ただ貴方と眠りを分かち合うために
私はこの街で今日も生きている。

好きになったのは間違いなの?
間違えた恋をしている
誰にも言わせないけれど
時々、泣きたくなる。

誰にも言えない言わせない
だけど
誰か私の話を聞いて。
誰か私にうなずいて。
誰か私の心に寄り添って。

ふつうの恋人同士のように
貴方と私はなれないの?
いつまで続くの自問自答。

貴方と眠りを分かち合うためだけに
私は今日も生きている…



したたる想い
満たされない想いが
またひとつ
この心に
したたり落ちる

なぜ
こんな恋をしたの?
誰を
なにを恨めばいいの?
苦しみはいつまで続くの?

もう堪えられないかもしれない
「無理」と言ったら
あなたは私から離れてゆくと知ってるわ
ドラマティックな幕引きなどなくて
あわれなまま
私は独りになってお終いなのよ
きっと…

だから
私は哀しみを隠して微笑むわ
胸の中で悲鳴を上げながら


それは、恋の一歩手前

旅行代理店の営業部から
総務部に異動になったわたしは
あまりの畑違いの仕事に
戸惑っていた。

"総務部経理課会計係コンピュータ室勤務"
辞令には、そう書かれてあった。

異動した先の部署で
「わたし、パソコン、出来ません」
ここはやはり正直が一番だと
上司にそう言った。

それなのに
「お前、バカじゃないの?
誰もお前にパソコン出来るかどうかなんて
訊いてなんかないんだよ」と
係長がわたしを怒鳴り飛ばした。

「この仕事に向いてません」
わたしは うつむきながら更にそう言った。

「だからさ、お前、さっきから
何を寝ぼけたこと言ってるんだよ?
パソコンが出来ようが出来なかろうが
この部署に向いていようが
向いてなかろうが
辞令が出たからには
やるしかねえんだよっ!
あたしには出来ません、向いてませんって
お前ってバカじゃないの?」
…係長はわたしを怒鳴ったあと
ドサッとパソコン関連の本を持ってきた。

「これを読めってことですか?」
わたしは恐る恐る尋ねたけれど
係長からの返事はなかった。
怒鳴るだけ怒鳴って
あとは、ひたすら無視を決め込んでいた。

単純な打ち込みならともかく
会計ソフトを作る仕事なんて
いったい、わたしにどうしろというのかと
途方に暮れて
いや、それさえも通り越して
会社を辞めたくなったけど
まさか辞めるわけにもいかない。

「あの…わたし、なにをしたらいいですか?」
仕事、仕事をしなくちゃと
係長に尋ねてみる。

「そんなの、自分で考えてみろ。
ホントにお前って予想以上のバカだな」
係長は吐いて捨てたように
わたしに言ったあと
また無視を続けた。

最悪。
もう、泣きそう。

ルックスは抜群なのに
口は悪い、わたしの新上司。

「なにをしたらいいですか?」
1ヶ月経っても
係長はわたしに
なんの仕事も教えてくれなかった。
それどころか
ひたすら無視を続けた。

「もう、いいです。
仕事を教えてくれなくてもいいです。
わたし、ひとりで取り組んでみるし
機械には弱いですけれど
わたしなりに精一杯やりますから!
その代わりに
わたしの仕事に口出さないでくださいね」と
係長に対してわたしは
不遜にもそう宣言した。

その瞬間に係長は
笑って
「ミホ、その言葉を俺は
ずっと待ってたんだよ。
だって情けねえだろ?
この部署に来て最初から
あたしには出来ません
あたしには向いてませんって
シッポを巻くのは悔しいだろ?
ミホの好きなように会計ソフトを作ってみろ。
パソコンの1台や2台なんて
壊したってかまわないくらいのつもりで
やってみろ」


係長は
「ミホの歓迎会まだなんで、急ではありますが
今夜みんなで飲みに行きませんか?」と
会計係はじめ経理課のみんなに声を掛けて
突然の歓迎会をしてくれた。
「やっと、こいつ、やる気を出したんで」と。


それがキッカケで
わたしと係長は仲良くなった。


「食事に行かないか?」
初めて
ふたりきりの食事に誘われたときには
まるでデートに誘われた気分だった。

ことあるごとに
係長はわたしを誘い出して
夏祭りやカラオケに連れて行ってくれた。

「新車を買ったんだ。
まだ誰のことも乗せてないから
お前を乗せてやるよ」
ドライブに誘われた日には
どう返事をしていいかわからないくらいに
うれしかった。

春、夏、秋、冬が過ぎて
また新しい一年が始まるころには
わたしも仕事を覚えて
係長のサポートを出来るくらいの
腕になった。

係長が深夜までコンピュータ室に居るときには
差し入れを買ってきて
わたしも深夜までの手伝いをした。


「ミホ、今夜、空いてるか?食事に行こう。
話があるんだ」
神妙な顔で誘われたときに
胸騒ぎがした。

食事がひとしきり終わると
係長は言った
「俺さ、会社を辞めて独立するよ」

そうして
帰り際に
わたしを抱きしめて
「短い間だったかもしれないけれど
最初から好きだったよ。
お前、最初、情けなくて
でも可愛くて
俺が育ててやるって思ったんだよ。
お前が大好きだよ」


「わたしも好きです」の言葉を
飲み込んだ。
旅立つ人へその言葉は
なにか違うような気がした。
上司と部下として出逢ったのだ。
最後までバカで可愛い部下でありたかった。

係長は
わたしのくちびるに
触れるか触れないかの
微かなキスをくれた。
ほろ苦いビールの香りがした。

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